1983年もエキサイティングな時代だった
いつの時代も、胸踊るエキサイティングなことはある。
今の若い人たちは、とってもエキサイティングな世界を生きているなって、いつも思うのだけど、ボクらの時代もずいぶん楽しくてワクワクすることがたくさんあった。
ボクの友人の尾島由郎さん(以降、尾島くん)は音楽家。
アンビエントミュージックの世界では有名です。
ボクは日本のブライアン・イーノだと思っている。
アンビエントミュージックというのは「環境音楽」のこと。
ブライアン・イーノが1978年に、ニューヨークのラガーディア空港のために作曲した「Music for Airports」が先駆的作品とされている。
空港という空間のために作曲された。
音環境も施設の空間のデザインとして考え、その場の価値を高めるあるいは、その場に立ち合った人に気持ちのいい時間や穏やかな時間を過ごしてもらうというようなコンセプトで作られている。
尾島くんも1980年代から数々の商業施設や社会教育施設の環境音楽を手がけている。
「ワコールアートセンターSpiral」や福岡の「キャナルシティ」なんかの音も彼がやっていた。
ボクが作った施設「アクアトト・ぎふ」のエントランスの音楽やボクのクライアントの「鶴雅リゾート」のホテルの環境音も作ってもらった。
その彼が1983年にプロデュースして発表した吉村弘さんの『Pier & Loft』が海外のネットのメディアに取り上げられていました。
Chee Shimizu’s 17853 Records reissues Hiroshi Yoshimura’s 1983 ambient album, Pier & Loft https://t.co/jr0mvOGhD6
— Resident Advisor (@residentadvisor) 2017年7月15日
このアルバムは、当時環境音楽の世界で活躍していた吉村弘さんという作曲家のアルバム。
尾島くんはこのアルバムのセッション・ミュージシャンでありプロデユーサー的な立場だったと記憶している。
実はここに収録されている曲は、セゾングループ(当時はまだそういう会社名ではなく、西武流通グループだった)の主催したファッションショー「ピア&ロフト」の音楽だった。
西武流通グループは当時、日本の現代アートの牽引役として、大活躍の会社でした。
西武百貨店池袋店内にて「西武美術館」、 アート専門書・レコード店「アール・ヴィヴァン」を開業したのが1975年。
そこから数々の文化的な活動、特に現代アートに関する活動を積極的に進めていた。
糸井重里さんの革命的なキャッチコピー『おいしい生活』が一世を風靡することになる、ウッデイ・アレンが出ていた西武百貨店のCMは衝撃的でした。
1983年というのは、そんな活動がかなり認知され、サブカルチャー的な立ち位置を確立しだしたころ。
その後六本木の名物になる施設「六本木WAVE」ができたのはこの年。
WAVEには映画館「シネ・ヴィヴァン」があった。
ちなみに西武が「無印良品」直営1号店を青山に開店させたのも同年。
その西武流通グループがニューヨークで契約した複数の若手ファッションデザイナーの服を告知したいということと、ニューヨークで「LOFT(倉庫)」がリニューアルされアートギャラリーとしてかっこよく使われていること、さらにブライアン・イーノの環境音楽が知的でアートっぽいイメージだったので、流行に敏感な人たちの間で話題になっていたことが要因だった。(と、勝手に思っている)
会場の倉庫が東京湾に面したところだったのでLoftとPier(桟橋)でこのタイトルになった。
ステージは青いイメージの照明が使われていたと思う。
海の底を思わせる舞台に、白いシャツと黒いスーツを着た、吉村さんと若き日の尾島くんがいて、シンセサイーやキーボードを生演奏している。
その周りに大きなウォークウェイが一段高く作られていて、外国人のモデルさんたちが彼らの周りを歩く。
環境音楽をファッションショーに使うというのは、斬新的なアイデアだなって思ったのを記憶している。
フロー感の漂う、不思議で格好いい空間だった。
久しぶりに『Pier & Loft』を聞いて、そんなことを思い出していた。
1983年にこんなにおしゃれで、現代的な音楽を創っていたのは、本当に驚き。
今聞いても、全く新しい。
尾島くんの投稿を見ていたら、そういえばこのアルバムのジャケットのデザインのアートワークのディレクションを、ボクがやったんだってことを、彼のコメントで思い出した。
1983年、今と同じく、時代は動いていた。
やっぱり毎日が興奮するような、遊びのような仕事ばかりしていたな。
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ユーチューブをリンクしておきます。
ぜひ、聞いてみてくださいね。
藤村 正宏
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