入りにくい店、個人を出して敷居を低く
新しくオープンした、ビルの2階にある飲食店、知らなかったら入りにくくないですか?
それがもし、バーだったらよけいに入りにくい。
「お客は常連だけで、場違いになるんじゃないかな」
「すごくこだわりのある、怖いマスターがいたら嫌だな」
「雰囲気もわからないし新しいバーに行く理由がないな」
などなど、心配やら恐怖やら自意識やらで、入りにくい。
数年前、昔お世話になった友人、木曽信介さんが東京の西麻布にバーを開業しました。
「Kiso bar」
六本木通り沿いにありますが、ビルの2階です。
普通だったら入りにくい立地です。
でも「Kiso bar」はそんなことないんです。
それは黒板のおかげ。
黒板が1階の入り口付近に掲げてあります。
オーナーの木曽さんが、毎日書いている。
これがとってもいい。
おもしろい。
木曽さんの個人が思いっきり出ていて、思わず行ってみたくなる内容になっている。
昨日は六本木のケバブ屋のスタッフの方がいらっしゃいました。
新しい出会いに感謝‼
オープンして1ヶ月‼
木曽信介(38)神戸出身です。
お気軽にどうぞ‼
年齢や神戸出身ということ。
新しい出会いに感謝しているということ。
そして極め付け「お気軽にどうぞ‼」
これだけで、かなり敷居が低くなります。
日曜日も営業しています。
やっぱり地元の方に来てほしいしね。
テーブルチャージもないし、軽くふらっと寄っていただければうれしいです。
お気軽にどーぞ‼
これも店の情報をさりげなく出して、見た人の懸念を払拭する効果になっている。
5歳の息子に
「ねえパパ知ってる? ハゲと坊主は違うんだよ。幼稚園で言ってたもん。パパはハゲだよ」
って言われました。
チキショー
小さな男の子がいる父親だということを、遊び心で発信、親近感あります。
浮気相手のお家に泊まったのが彼女にばれてしまっても
こう言えば大丈夫です。
「民泊だもの」
by西麻布みつを
この「西麻布みつを」シリーズは好評です。
初めての確定申告に取り組んでいますが、なにこれ、超おもしろいですけど‼
さらにその黒板、木曽さんも一緒に登場して、毎日コメントつきでFacebookにアップしています。
たとえばサッカー日本代表の試合のある日はこんな感じの投稿です。
「おはようございます。
今日もサッカー日本代表の試合がありますね。
前回はホントにたくさんの人が見に来てくれました。
JCOM頼んで良かった!プロジェクター買って良かった!ヨドバシカメラで買って良かった!!
冗談はさておき今日の試合もお店で流そうと思ってます。前回同様、混雑が予想されるのでご予約必須でオネガイシマス‼」
Facebookの写真で「kiso bar 看板(西麻布)」というアルバムがあるのでそこを見ると、今までのすべての黒板がほぼ見ることができます。
遊び心をもってコミュニケーションする
よくチェーンのカフェとかでやっている店頭の黒板があります。
「寒い日ですから、あたたかいカフェオレをどうそ」
などと書いてある、通り一辺倒のものとは明らかにちがいます。
そこに個性が出ているか。
その言葉に心が入っているか。
楽しんでいるのがわかるか。
そこに「遊び心」があるか。
そんな違いがある。
木曽さんは、業務としてやっているのではなく、街を行く人たちと、楽しんでコミュニケーションしているということ。
黒板を販促の手段だと思っていないということ。
でも結果的にこれがすごい販促物になったのです。
開業してわずか9ヶ月の時点で、黒板を見て来店してくれた新規のお客さまが680名です。
つながりの経済では、コミュニケーションすることがとても大事なことです。
一方的に顧客に情報を流す時代は終わりました。
企業ではなく顧客のほうが主導権をもっている時代なのです。
遊び心をもって、個人を出し、顧客と交流する。
それがとっても大事になってくる。
たった一枚の黒板でも、毎日工夫して書いていたら、すごいコミュニケーションになる。
そして、見ている人との関係性ができて、来店につながるのです。
藤村 正宏
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