夏休みの日曜なので、またボクの自伝です。
マーケティングコンサルタント藤村正宏の自伝:11
演劇は就職やビジネスにも役立つ
明治大学文学部の演劇学に入学したことを伝えると、多くの人たちは、「どうして?」という顏をしました。
高校までほとんど演劇なんてやったことないし、人前に出るのも嫌いだし、幼稚園の時の学芸会で「花さかじいさん」の主役をやったことはあったけど、それ以来まったくお芝居とは無縁だった。
だからみんなボクが演劇学を選んだのが不思議だったのです。
おまけに、演劇学が将来、就職なんかに役立つなんていうのも、想像できないようだった。
もちろん、当の本人だって、就職なんかに役立つわけがないと思っていたのですから、当然の反応です。
ただ純粋な好奇心で演劇学を志したのですから。
ともかく東京に出て、演劇をやりたい!
演劇を見たい!
それだけです。
演劇といっても伝統的な新劇や古典ではなく、当時はアングラと言われていた芝居にはまりました。
唐十郎(俳優、大鶴義丹のお父さん)が主催していた紅テントの「状況劇場」は、毎回見にいっていました。
そして、ボクもずっと4年間以上、演劇を創り続けていました。
今思うと、演劇っていうのはとってもビジネスに役立ちます。
演劇をやっていた学生を、あなたの会社に採用すると、かなり活躍すると思います。
それはなぜか?
3つの理由があります。
1:シナリオ力が養われる
演劇の要素で大切なのは、シナリオです。
お芝居がどう始まって、どういうふうに物語が進行して、どういう結果になり、どういうメッセージを観客に与えるのか?
これを、常に考えているわけです。
演出する人はもちろん、美術、照明、音響、役者。
関わる人すべてが、そういうことをいつも意識している。
だから、最初のセリフはこっちのほうがいい、とか、音楽はどうだとか、照明がこうだとか、演技がこうだとか。
そういうことを議論したり、演じたり、試したり、稽古したりしながら一つの作品を創り上げていくわけです。
これって、何かに似ていませんか?
そう、マーケティングと同じなんです。
売れるしくみっていうのは、シナリオです。
モノを売るために、集客するために、シナリオ発想がとっても重要です。
演劇をやっていた人は、シナリオ発想ができるんです。
2:演出力が養われる
次に演劇は演出力が大事です。
演出力。
も少し平たく言うと、表現力と言ってもいい、
同じことを伝えるにも、表現力があるかないか、それで伝わり方がまったくちがうんです。
だから演劇をやっていた時に、言った言葉「伝わってないな~」「伝わってね~よ」「伝わらないってのは何もないのと同じなんだよ」。
常日頃、表現力を磨いているってこと。
演劇をやっていた人は、役者も裏方も表現力のプロなわけです。
あなたの会社のすべての営業マンが表現力豊かだったら、どうですか?
きっと価値を伝えてくれるでしょう。
あなたの会社の販促セクション全員が、表現力が豊かだったら、どうですか?
きっとすごく売れる販促を作ってくれるでしょう。
3:プロジェクト能力が養われる
3つ目は演劇っていうのは、チームで作り出すってこと。、
チームがバラバラだと、どんなにいいシナリオ、どんなにいい役者がそろっていても、まったくダメな作品になります。
チームで役割分担して、協力したり切磋琢磨したり、調和したり意見を出しあったりしながら、作品を作っていく。
チームワークがよくないと、変な作品になってしまう。
たとえば、自分の立場を主張したり、嫉妬したり、悪口や陰口、噂話などを言ったり、仲が悪いスタッフがいたとしても一つの目標に向かって、最大限の能力を出しあう。
何が目標なのかがわかっているから、たとえどんなに嫌いな相手でも、その能力を認めリスペクトして協力する。
一緒に作品を作っているんですから、足の引っ張り合いや、チームのマイナスになるような行動は決してしません。
だって、すべて自分に返ってくるから。
それが、成功する要因なんです。
まさにビジネスのプロジェクトも同じでしょ。
演劇を真剣に作ったことのある人だったら、それが良く理解できるのです。
それができるから、協調性のない人間にはある意味、できない。
こう見てくると、演劇っていうのはビジネスにとっても役立つと思いませんか?
あなたの会社、演劇をやっていた学生を社員にすると、飛躍すること間違いありません。
実際、ボクは演劇を4年間以上やっていたことを評価され、倍率の高い会社に入社したのです。
大学ではほとんど勉強せず演劇ばかりやっていた
ボクは明治大学を卒業しましたけど、ほとんど4年間、早稲田大学文学部に通っていました。
早稲田の文学部にあった「劇団 森(SHIN)」というところで芝居をやっていたんです。
早稲田大学にはたくさん劇団がありました。
同じ時期に早稲田で芝居をやっていた人で有名なのは、たとえば・・・
ラサール石井さんは、部室がお隣のミュージカル研究会というところでミュージカルをやっていた。
女優の室井滋さんの初舞台も観たし、鴻上尚史さんの「第三舞台」の旗揚げ公演も大熊講堂の裏のテントで観ました。
「第三舞台」はベケットの『ゴドーを待ちながら』と、当時流行していたルービックキューブをモチーフにした傑作、『朝日のような夕日をつれて』が最初の公演だった。
1981のことです。
早稲田ではありませんが、東京大学で、野田英樹氏が率いる劇団「夢の遊眠社」を観たのもこの時期だった。
東大生の劇団なんて、面白くもないだろうなって勝手に思っていて、観に行ったら、これは度肝を抜かれた。
若い才能ある演劇人がたくさんいて、刺激的な時代だった。
当時、学園紛争は少しは残っていたけど、ずいぶん下火になっていた。
武力闘争では、世の中は変わらないと、誰もが認識しはじめていた。
今の日本では、もう革命なんて起こせないって。
でも何か世の中にメッセージを伝えたいという思いで、演劇が流行していたんじゃないだろうか。
当時面白かったのは、唐十郎の紅テント「状況劇場」。
根津甚八や小林薫が看板役者で、本当に面白かった。
その他良く観ていたのは、劇作家、山崎 哲が主催していた劇団「転位・21」。
社会的な犯罪を脚色した舞台は、毎回舞台装置が凝っていて、刺激的でした。
現在も、紆余曲折はあったものの、「状況劇場」は「劇団 唐組」として、「転位・21」は「新転位・21」として、上演をつづけています。
たまに観に行って、当時の風を感じることがある。
そんな感じで大学4年間は、ずっと芝居漬けでした。
当然、演劇をやり続けたいと思っていたので、就活なんてしなかった。
大学は4年で卒業したけど、卒業式の時点でまだ何も活動していなかった。
なんとなく「なんとかなる」って、根拠のない、楽観的な考えでした。
それから、マネキンメーカーの「京屋」に、ディスプレイデザイナーとして就職するのですけど。
それまではさらに、卒業してから半年ほど時間が過ぎるんです。
(つづく)
藤村 正宏
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