森を歩くと、木々の香りがする。
湖のほとりに立つと、空気が変わる。
静かな夜、耳を澄ませると、自分の鼓動が聞こえる。
──自然は、すべての「感覚」に働きかける。
だからこそ、森と湖のリゾートは、ただの「観光地」じゃない。
心を動かし、人生を変える“舞台”になる。
自然がもたらす五感刺激をベースにした体験設計のヒントを、リゾート営業・アウトドア体験マーケティングの視点から紹介します。
「五感」を動かすことが、心を動かす。
現代人は、思った以上に“五感”を使っていません。
スマホの画面を見続け、
エアコンのきいた部屋で、
無機質な音楽を聞き流す。
都市生活は、視覚情報に偏りすぎて、
嗅覚も、触覚も、聴覚も、鈍らせてしまうんです。
だからこそ、森や湖に行ったとき、人ははっきりと「生きている」と感じる。
営業やマーケティングで自然体験を提案するとき、
単なる「アクティビティの数」じゃなくて、
「五感をどう震わせるか」を意識することが、圧倒的に大事です。
森と湖のリゾートが持つ「五感設計」素材
森と湖のリゾートは、もともと最高の素材を持っています。
あとは、それをどう生かすか。
それぞれ整理してみましょう。
■【香り】──森の匂い、湖の匂い、焚き火の匂い
森を歩くと、木々の香りがする。
カヌーを漕ぎ出すと、湖面から冷たい水の匂いが立ちのぼる。
焚き火のあとの衣服に残る、ほのかな煙の香り。
香りは、記憶と直結している感覚です。
「あのときの匂いで、旅を思い出した」という体験、ありますよね?
体験提案のなかに、「香りのシーン」を意識的に組み込もう。
■【音】──森の音、湖の音、無音の音
小鳥のさえずり、風に揺れる葉っぱの音。
カヌーのパドルが湖面を切る音。
──あるいは、何も聞こえない“無音”の時間。
音を意識させると、体験は一気に深くなる。
たとえば「湖の真ん中で、静かに耳をすませる」というアクティビティ設計もできる。
■【触感】──水の冷たさ、土の柔らかさ、火のあたたかさ
カヌーに乗る前に、水に手を浸して感じる冷たさ。
森の土を素足で踏みしめる柔らかさ。
夜、焚き火にかざした手が感じるぬくもり。
触覚の刺激は、心を解放する力を持っています。
「手で感じる」シーンを、意図的に体験プランに入れよう。
■【温度】──空気の冷たさ、日差しのぬくもり
森の中のひんやりした空気と、日向に出たときのあたたかさ。
早朝の湖上ツアーなら、肌寒さから始まる冒険。
体感温度の変化を演出できると、旅の印象が一段と深くなる。
■【光】──朝もや、夕焼け、満天の星
朝もやの中、森を歩く。
夕暮れ、湖に沈むオレンジ色の太陽を見る。
夜、焚き火のそばで、満天の星空を仰ぐ。
光の演出は、旅を「神話」にする。
時間帯を変えるだけで、リゾートの顔は劇的に変わる。
光を味方につけた提案ができれば、最高の体験デザインになる。
営業・マーケティングのポイント
「五感から逆算」してプランをつくろう。
自然体験を提案するとき、こう考えてみてください。
「このプランで、どの感覚を、どんなふうに震わせるか?」
たとえば…
- 朝もやの湖をカヌーで進む → 視覚+触覚+音
- 森でスパイスを使ったアウトドア料理教室 → 嗅覚+味覚
- 星空の下、キャンプファイヤートーク → 聴覚+光
単なる「メニューづくり」じゃなく、五感のシナリオを描く。
これが、自然体験型リゾート営業・マーケティングの未来です。
どんな物語を紡ぐか
森と湖が人を惹きつけるのは、そこに「五感を取り戻す力」があるから。
ただアクティビティを並べるだけじゃない。
お客さまの五感を震わせ、心を動かす提案をしよう。
自然は、すでに最高の舞台を用意してくれている。
あとは、どんな“物語”をいっしょに紡ぐかだけです。

藤村 正宏

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