森を抜けて、湖に漕ぎ出す。
その瞬間の、ひんやりした空気と、水の匂い。
──きっと、誰もが一生、忘れない。
「アドベンチャー・ツーリズム」が注目されている
リゾートは、もう「プランを売る」だけじゃ足りない。
お客さんと一緒に、「人生の物語」をつくる時代が来ている。
最近、観光業では「アドベンチャー・ツーリズム」が注目されています。
簡単にいうと、ただの観光旅行ではなく、「自然や文化と深く関わりながら、ちょっとした冒険やチャレンジを楽しむ旅」のことです。
アドベンチャー・ツーリズムには3つの基本要素があります。
- 自然体験(Nature)
森、湖、山、海など、自然の中で活動する。 - 身体的アクティビティ(Physical Activity)
ハイキング、カヌー、乗馬、サイクリング、スキー、ダイビングなど、体を動かす。 - 文化体験(Cultural Immersion)
地域の伝統、食文化、歴史、暮らしに触れる。たとえば、アイヌ文化体験や里山での農業体験もこれにあたります。
僕のクライアント、北海道の鶴雅グループでも、アドベンチャー・ツーリズムに力を入れています。
この3つの基本要素の中で、1の自然体験と、2の身体的アクティビティの要素を入れて、自然体験を「売る」のではなく、「共創」するという、エクスマ的な視点で、勝手にマーケティングプランを作ってみました。
自然体験は、アクティビティじゃない。「未来の記憶」だ
カヌーツアー、SUP、焚き火、星空観察。
森と湖のリゾートには、たくさんの体験プログラムがあります。
でも、お客さんが本当に買っているのは、アクティビティそのものじゃない。
「あのとき、こんな気持ちになった」という記憶です。
たとえば。
湖に出る直前、手を水に浸して「冷たっ!」って笑った瞬間。
森を歩いて、ふと立ち止まったときに聞こえた、鳥の声。
焚き火の火に、なんとなく無言で見入った夜。
こういう細かい“感覚”が、あとになって人生を照らすんです。
この「未来の記憶」を一緒に設計する人になるべきです。
ファミリー向け「話したくなる思い出」をつくる
家族で自然体験に来るお客さんに必要なのは、
「何をしたか」より、「あとで何を話したくなるか」。
子どもと一緒にカヌーを漕いだ話。
森で拾った不思議な葉っぱの話。
夜に見た、ありえないくらい大きな星の話。
プランを売るんじゃない。
「家族の語り草」になる瞬間を、提案するわけです。
カップル向けなら、「秘密の時間」を演出
カップルや記念日利用のお客さんには、「記念日プランあります!」じゃ物足りない。
大事なのは、
「二人だけしか知らない瞬間」をいっしょに演出すること。
たとえば、
夜の湖にカヌーで漕ぎ出して、真っ暗な中で星を見る。
そのとき、誰にも邪魔されない“秘密の時間”が生まれる。
それをいっしょに想像して提案できたら、
もう普通のとは違う、**“共犯者”**になれる。
企業研修なら、「肩書きを脱がせる体験」を仕掛けよう。
企業向けのアウトドア研修も同じ。
「チームビルディングプログラム」のカタログを持っていくだけじゃダメ。
森を歩き、湖を漕ぎ、火を囲む。
自然の中では、部長も新入社員も、肩書きなんか関係ない。
営業は、「普段の役割を脱ぎ捨てる瞬間」を一緒に設計する。
それこそが、本当に強いチームを育てるきっかけになります。
キーワードは、「一緒に妄想する」
自然体験を売るために、いちばん大事なのは、「商品説明」じゃなく、「いっしょに妄想」すること。
・この湖で、どんな気持ちになるだろう?
・この森の中で、誰と、どんな話をしたいだろう?
・この焚き火を囲んで、どんな未来を語りたくなるだろう?
答えを用意して押しつけるんじゃない。
一緒にワクワクしながら想像する。
そのプロセスこそが、いちばん強い“営業活動”なんです。
アドベンチャー・ツーリズムはモノを売る感覚ではない
自然体験は、もう「モノ」を売る時代じゃない。
売るのは、未来に残る“記憶”や、“関係性”です。
森と湖のリゾートだからこそできる、
人生に刻まれるような体験を──
お客さんといっしょに、妄想して、編んで、育てていこう。
あなたの提案が、誰かの「一生の宝物」になるかもしれません。

藤村 正宏

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