売らない哲学
ふつう、ビジネスって「どう売るか」「どれだけ売るか」がテーマになりますよね。
広告を打ったり、キャンペーンをしたり、SNSでバズらせたり。
とにかく「たくさん売る」ことが、正義のようになってる。
でも、F社はちがいました。
「売るために、売らない。」
この発想、ちょっとクールじゃないですか?
たとえば、昔ながらの寿司屋さんにも、似たような考えの職人さんがいたりします。
「うちの味が合わないなら、無理して来ないでいいよ」って顔して、
でもその味が好きな人にとっては、たまらなく嬉しい場所になる。
「誰にでも合わせない」って、時には“わがまま”って思われるかもしれないけど、
“わがまま”は“個性”でもある。
F社が使うのは「本物の素材」。
そして「10年もつ設計」。
この2つを軸にしたブレないポリシーが、クライアントを育ててるんです。
「うちに頼むと高いです」って正直に伝えることで、
“安く早く”を望んでる人たちは、自然と離れていく。
でも残るのは、「本当にいい店をつくりたい」って思ってる人たち。
その結果、F社の仕事はどんどん良くなって、
口コミだけで依頼が来るようになった。
「売らない」ことが、「選ばれる」ことにつながってるんです。
ぜんぶのドアを開けなくてもいい
販路って、広げれば広げるほどいいと思われがちだけど、
広げたぶんだけ、メッセージがぼやけることもある。
たとえば、誰でも入れるようにとドアを全部開けていたら、
中の空気が逃げちゃって、なんだか落ち着かない場所になることもある。
「あなたのためだけに、このドアを開けてます」
そんなふうに、しっかりドアを選んでくれるお店や会社に、
人は安心するし、惚れ込むんじゃないかなって思います。
「選ばれる」ことのよろこび
僕たちは、つい“売れること”が成功だと思ってしまいがちだけど、
“選ばれること”のほうが、ずっと幸せな形かもしれません。
安売りや値引きでつながる関係よりも、
ちゃんと価値を感じて、お金と時間を払ってくれる人との関係のほうが、
きっと長く、深く、気持ちよくつづいていく。
F社のように、「売らないことで、売れる」っていう考え方は、
これからの時代の、小さな会社や個人にも、すごくヒントになる気がします。
“売る”より前に、“惚れてもらう”
仕事でもお店でも、商品でもサービスでも。
「売る前に惚れてもらう」っていう姿勢が、いちばん強いんです。
惚れてくれる人にだけ届ける。
惚れてくれる人とだけ仕事をする。
それって、自分自身の誇りを守るってことでもあるんです。
だから、ときにはちょっと「売り惜しむ」くらいがちょうどいい。
たとえばSNS。
がんばってフォロワーを増やして、たくさんの人に見てもらって、リンクを貼って商品に誘導して…
もちろん、それも大事なこと。
でもね、SNSって、本来は「売る場」じゃなくて「惚れてもらう場」だと思うんです。
たとえばInstagramで、毎日せっせと商品を投稿してるお店があります。
でも、フォロワーからの反応はいまいち。
その一方で、商品のことじゃなくて、店主さんの日常や考え方、
ちょっとした“好きなもの”について発信しているアカウントには、
「なんかいいな」「この人のセンス、好きかも」って惹かれるコメントが集まってる。
それってもう、“売れてる”状態じゃなくて、“惚れられてる”状態なんですよね。
F社の話に戻ると、
あの会社だって、SNSで「実績」や「価格表」をずらずら載せるよりも、
「なぜ10年もつ店をつくるのか」とか、
「この素材にこだわる理由」とか、
“想い”や“背景”を発信することで、
じわじわと「惚れてくれる」人を集めている。
SNSは、拡声器じゃない。
むしろ“手紙”とか“つぶやき”に近い。
距離が近い分、想いが伝わりやすい。
だから、ちゃんと「惚れてもらう」ことを意識した投稿って、
静かだけど、すごく強いんです。
だから、いまSNSをやっているあなたにも、伝えたいことがあります。
「どうやって売るか」の前に、
「どうやって好きになってもらうか」を、考えてみてほしいんです。
それは、ちょっと勇気のいることかもしれないけど、
きっと、商売の景色がガラッと変わってくるはずです。
SNSで“惚れてもらう”ための5つのコツ
~売る前に、好きになってもらうために~
「なんかこの人、いいな」って思ってもらえるSNSって、
実は“売るための投稿”より、もっと“人っぽい投稿”だったりします。
ここでは、実際にSNSで“惚れてもらえる”人がやっていることを、5つのポイントにまとめてみました。
① 売らない投稿も、ちゃんと混ぜる
いつもいつも「これ買ってください」って投稿ばかりだと、
誰でもちょっと疲れちゃいますよね。
ときどきでいいから、
・自分が大切にしてる価値観
・好きな喫茶店の話
・季節の風景
・子どもとのやりとり
みたいな“人間っぽさ”を出すと、不思議とファンが増えていきます。
🟡 コツ:「今日は売らない日」って決めて、週に1回“人間味のある投稿”を。
② 「プロっぽさ」より「らしさ」
きれいな写真、おしゃれな言葉、それももちろん素敵なんですが、
ちょっと雑でも「その人らしい」投稿のほうが、なぜか印象に残ります。
たとえば、手ブレした写真でも「今日は眠くて、ちょっと手が震えてました笑」と書いてあったら、
もう、それだけで“好き”って思ってしまう人もいるんです。
🟡 コツ:「上手に見せる」より、「自分らしく話しかける」ことを意識。
③ いいねの数じゃなく、反応の“深さ”を見る
バズっても、誰とも関係が生まれない投稿より、
5人でも「心から共感した」って反応がもらえる投稿のほうが、じつは価値があります。
F社みたいに、“たった一人の本気の共感者”を大事にする感覚を、SNSにも持ってみてください。
🟡 コツ:「何人に届いたか」より、「誰に届いたか」を見るクセを。
④ 投稿は“おしゃべり”だと思う
SNSの投稿を「広告」や「プレゼン」だと思うと、堅くなってしまいます。
だけど、SNSって本来は「しゃべる場所」。
カフェで友達に近況を話すみたいに、ふわっとした投稿のほうが共感されやすい。
🟡 コツ:「話すように書く」と、自分も読者もラクになります。
⑤ 「あなたに届けたい」という気持ちを込める
誰に読まれるか、まったく想定していない投稿よりも、
「今日来てくれた、あの常連さんに向けて」とか、
「この前DMをくれた〇〇さんに届いたらいいな」
そんなふうに“相手の顔が見える投稿”は、ちゃんと伝わるんです。
🟡 コツ:投稿するときに、心のなかで“ひとり”を思い浮かべて書く。
惚れてもらうことは、信頼のはじまり
フォロワーを増やすことより、
「好き」って言ってくれる人がひとりでも増えることのほうが、
商売にとっても人生にとっても、ずっと大事なんじゃないかな、って思います。
“売る”より前に、“惚れてもらう”。
そのために、今日の投稿をちょっとだけ変えてみる。
それだけで、明日の反応はきっと変わってきますよ。
今の時代の商いの“美しさ”
売り上げを伸ばす。フォロワーを増やす。バズらせる。
そういう“派手な数字”が正義になりやすい世の中です。
でも、F社のように、あえて「売らない」ことを選ぶことで、
ほんとうに信頼できるお客さんとだけ、しっかりつながるやり方もある。
それって、SNSでも同じなんですよね。
派手な投稿じゃなくてもいい。
誰かひとりに深く届けば、それでいい。
今日の投稿が、
たったひとりの「なんか好きかも」という気持ちを引き出せたら、
それが“惚れてもらう”はじまり。
そうやって、静かに強く、あなたのブランドは育っていきます。
たくさん売るより、たったひとりに“惚れられる”こと。
それが、これからの時代の商いの“美しさ”なんじゃないかなと、僕は思っています。

藤村 正宏

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