
シェフが目の前で調理してくれる<鶴雅のバイキング>
大切なことを削るからみんな似たようなものになる
情報があふれてる時代。
「もっと効率的に」「もっと速く」「無駄なく」。
そんな言葉が、あたりまえのように飛び交っていますよね。
スマホを開けば、どんどん流れてくる情報。
知りたいことがあれば、検索すれば一瞬で答えが出る。
動画だって、短くてテンポがいいほうが人気。
でも、そんなスピードに慣れすぎると、なんだか、大事なものを見失ってしまう。
たとえば、バイキング。
あれも食べたい、これも食べたい。
少しずつ取って、お皿にいろんな料理をのせる。
お腹はいっぱいになるけど、どれもじっくり味わえてない。
そういう経験ありません?
というか、その時は思わなかったけど、後で考えてみたら、何を食べたのか記憶に残っていないことってあるかもしれない。
そうならないように、料理盛り付けの演出、圧倒的な種類の料理の見せ方、その場でシェフが料理を作るアクション、などなど工夫が必要なってきますよね。
それが他のバイキングレストランとは違う個性になっていくのです。
<北海道阿寒湖の温泉ホテル『鶴雅』のバイキングはそんな工夫をしている>
情報環境でも似たようなことになっています。
「時間をムダにしたくない」
「価値のあることにだけ、時間を使いたい」。
そんな気持ちは、ものすごくわかります。
でも、ムダを削ぎ落としすぎると、なんだか、みんな似たようなことを言うし、みんな同じ方向を向いちゃうんですよね。
ムダな時間が価値になる
ある老舗旅館の話があります。
ここでは、ネット予約ができません。
予約はすべて、電話のみ。
今どき、そんなの面倒だと思うかもしれません。
でもね、この旅館の予約の電話って、「どんな旅にしたいですか?」って、宿の人がじっくり聞いてくれるんです。
「夕食は静かに食べたいのか、にぎやかに楽しみたいのか」
「朝はゆっくり寝たいのか、早起きして観光したいのか」
そんな会話を通して、お客さんが思ってもみなかったような、「ぴったりの旅の提案」をしてくれる。
たとえば、あるご夫婦が、
「夕食は静かに楽しみたいんです」と言ったら、
「じゃあ、離れの個室にしましょうか」とか、
「夕暮れの川が見えるお席、どうでしょう?」って。
そんなやりとりの中で、”ただの予約”が、”思い出の旅の始まり”になるんです。
もし、ネットで「ポチッ」と予約するだけだったら、こういう会話は生まれなかったはずです。
ビジネスでも、
「いかに短く伝えるか?」
「いかに効率よく売るか?」
ってことばかり考えていると、
どこか”味気ない”ものになってしまいます。
シンプルに伝えるのは、大事です。
でも、「じっくり考える時間」とか、「しっかり味わう時間」って、やっぱり必要なんですよね。
たとえば、旅先のカフェで、なんとなく注文した一杯のコーヒー。
飲んでみると、すごくおいしい。
「このコーヒー、特別な豆を使っているんですか?」って聞くと、
店主が「実はね、この豆は…」と話しはじめる。
農家さんのこだわり、焙煎の技術、この豆が育った土地のこと。
さらに、豆を焙煎するときに気を使っていること。
そんな話を聞いたら、そのコーヒーは「おいしい」だけじゃなくて、「特別な一杯」になりますよね。
もし、「おいしいコーヒーはどれですか?」って聞いて、
「これです。では、どうぞ!」って渡されるだけだったら、
その場で「おいしい」とは思うかもしれないけど、
家に帰っても、その味を覚えているかどうかはわからない。
そう考えると、
ムダな時間とか、ムダな手間って、
実は”豊かさ”のことなんじゃないか、と思うんです。
ビジネスの世界では、
「無駄な時間」「無駄な手間」「無駄な会話」って、
ずっと”いらないもの”とされてきました。
でもね、
人の心を動かすのって、
“そういうムダ”の中にあるんです。
だからこそ、あえて”ムダ”を大切にすると、
ビジネスはもっと 楽しく、豊かで、面白くなるのです!

鶴雅バイキング「寿司コーナー」

洋食コーナーもシェフが

中華コーナーもシェフが調理

料理の並べ方や見せ方も工夫

藤村 正宏

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