孤高の画家「木島 務」にSNS時代の真理を見た すべての人がアーティスト

僕が生まれ、育った街、北海道の釧路に来ています。今日で4日目。
釧路市が主催するSNS情報発信講座と阿寒湖の観光協会が企画したSNSワクワク大作戦のためです。
そこである高名な画家の事例を話しました。

北海道釧路市に木島務さんという画家がいました。
2011年に72歳で亡くなられましたが、熱狂的なファンがいた画家です。
かつてボクの著書の中で紹介したことがありますが、ここで改めて紹介しましょう。
SNS時代の真理が隠されている逸話だと思うからです。

木島さんは芸術団体に所属しているわけでもなく、画廊と契約しているわけでもありません。
芸術賞などにも関心がなく、純粋に自分の作品だけ発表していた。まさに孤高の芸術家。
ボクも何度かお目にかかったことがありますが、ひと目で芸術家とわかる外見も個性的な方でした。
最初に会ったとき、絵を売っていると聞いて、それだけで食べていけるのだろうかと思いました。釧路というのは当時、人口が17万人前後の街です。
そんな地方都市で、自分の絵だけを売ってやっていけるのだろうか。そういう疑問です。

木島さんは年に6回、北海道内で個展をやっているということでした。
釧路3回、札幌2回、函館1回。
絵の価格も安くありません。どちらかというと、結構高価です。
あとで関係者の方からうかがったのですが、個展をするとほぼすべての作品が売れる。
すごいなと思った。結構高価な絵が毎回完売する。
最初は信じられませんでした。
確かに素晴らしい絵を描いています。釧路湿原や釧路川、北海道の風景を、独特の色使いと力強いタッチでエネルギーがあふれる風景画です。
ただ、絵というのはある意味、生きていくために必要なものではありません。
おまけに高価。それが完売するとはなかなか信じられませんでした。

ところが木島さんには売れる秘密があった。
それは、「顧客名簿」です。
過去、個展に来てくれた方の名前と住所が記してある大学ノートがあるんです。
その数、約3000名。
そして木島さんは個展を開くたびに、3000名に手書きでハガキのダイレクトメールを書くのです。ハガキの裏は自身が描いた絵になっています。
線は印刷してありますが、自分で色をつける。手書きで宛名を書いて送る。
これはすごいことです。
だって3000名ですよ。おまけに有名な画家が自ら色をつけた手描きの絵です。
このハガキを毎回楽しみにしていて、額に飾っている人もたくさんいるそうです。
そして、丁寧に送り続けていると、皆、何回かに1回は個展に足を運んでくれるそうです。

「先生、いつもお手紙ありがとうございます。
先生の絵、うちの家計じゃまだとても買えないんですよ。
今度お父さんが定年退職したら、退職金で買わせていただきますね」
そういうお客さまがいても、木島さんは絶対に売ろうとはしないそうです。
「買わなくてもいいよ、見ていくだけでいいから」
それで、お茶を出したり、お菓子を出したりして個展会場でもてなすんです。
ファンが大勢いるのもわかる話ですよね。
新規の人には一切告知しなくても、新しいファンが増えていく。
それは、ファンの人が友人を連れてきてくれるからなんです。

ある個展の際の話です。
20代半ばくらいの会社員風の女性が、1枚の絵の前にたたずみ、ずっと鑑賞していたそうです。その女性はその絵の前から離れません。木島さんは、それに気づき女性に声をかけました。

木島 務さん


「この絵、気に入ったのか?」
「はい、とってもいい絵ですね」
「そうか、欲しいか?」
「はい……でも、私はこんな高い絵は買えません」
「きみは働いてるのか」
「はい。○○で仕事しています」
「そうか。ひと月1000円払えるか」
「1000円ならなんとか」
「だったら持っていっていいぞ」
「えっ、いいんですか」
「うん、払えるときに払えばいいから。持ってけ」

そういう感じの人なんです。だから人気がある。
完全に木島さんを中心とした、コミュニティができあがっているのです。
コミュニティをつくることはスゴイことだなと思います。
規模の小さい北海道の地方都市で、個展を開いて、ちゃんと食べていくどころか、満足な収入を得ている。
個展をやって発信していくと有名になっていきます。
広告代理店から「○○のポスターの絵をお願いします」と仕事の依頼が来たり、公共施設や経営者からオリジナルの絵を依頼されたりとか。さまざまな話がきます。

この木島さんの個展の逸話は、商売の真理ともいえるでしょう。
商品がいいだけではなく、おなじみさんにいつもコンタクトをとって、大事にする。
コミュニティの「つながり」を大切にしている。
そうするとリピーターが増え、それと同時に新規客が増えていく。
どこの団体にも属さず、画廊や代理店などにも頼らず、自分でファンに直接「作品」を売っている。

これは今のSNS時代のビジネスに通じるものがあります。
音楽をやっている人、絵を描いている人、小説や詩を書いている人、ものをつくっている人、商売をやっている人……さまざまなビジネスにとても参考になる事例です。
誰にも頼らないで、自分のファンに直接買ってもらう。
木島さんは、このつながり=コミュニティを何十年もかかってつくり上げてきたのだと思います。
でも、ボクたちは今、SNSという強力なツールを与えられているのです。
数年で、あなたが中心になったコミュニティができる可能性はとても大きい。

SNSであなたに共感してもらい、ファンになってもらう。
すべてのビジネスに携わる人は、そういうスタイルで仕事ができると、今までとは違う世界が広がると思うのです。
個人が主役で、つながり合う世界になった。
独自の価値、独自のスタイルです。
そういう意味で、SNSを使っている人はすべて「アーティスト」といえます。

#数年で、あなたが中心になったコミュニティができる可能性はとても大きい


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北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」
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でも日本人は、「自分は無宗教」という人も神社に行けば手を合わて祈願する。
結婚式をキリスト教の教会で挙げた人もいると思う。
そしてお葬式では経を唱えて亡くなった方を見送る。
それは日常的に「超自然的な何かを感じて信じている」ってこと。
そういうことを宗教と定義するのなら、僕たち日本人はとても宗教的な民族なのかもしれません。

詳細はこのブログからね。

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