明治時代、政府がやっていた「インフルエンサーマーケティング」とは? 樋口一葉が5000円札の肖像になったわけ

国立印刷局のウェブサイトから<見本>

5000円札の女性は何をした人?

今使われている5千円札の肖像は誰かわかりますか?
明治時代に活躍した女流作家、樋口一葉です。
有名な作品は『たけくらべ』です。

今の5000円札が発行されたのは、2004年のことです。
どうして彼女が5000円札の肖像に選ばれたのか。
その理由は色々と推察できます。
女性の差別や女性蔑視の社会はいかがなものかという風潮が出てきた頃に、日本はジェンダーの不平等が世界の国々と比して大きかった。
そこで女性を肖像画に使ったってこともあるでしょう。

樋口一葉は間違いなく歴史に残る作家です。
なぜなら、日本近代文学の出発点と言ってもいいくらいの作家だから。
それで5000円札の肖像に選ばれたと、僕は思っています。

『たけくらべ』は明治維新があり、憲法が発布され、近代国家としての形が朧げながら出来上がってきた頃、1895年に書かれた小説です。

若干23歳の若い女性が突如現れて、今までの文学ではありえないテーマと文体で国民的な大スターになった感じ。
今で言えば、無名で顔を出さないシンガーAdoがTikTokで「うっせー!!」と言って、突然現れた感じ。(笑)

樋口一葉は、浅草の吉原あたりの普通の人たちの日常を書き続けた人です。
『たけくらべ』はその代表作。
主人公は3人います。
14歳の美少女美登里。
彼女に思いを寄せる少年、13歳の正太郎。
お互い喧嘩などしながら、実は美登里が密かに好意を持っているお寺の息子、信如(しんにょ)。
たわいもない思春期のほのかな恋愛や喧嘩、行き違いなどが細やかに描かれています。
そのうち彼らは大人になるための門に立たされ、美登里は姉と同じ女郎になる。
信如はお寺を継ぐために、お坊さんになる学校に進学していく。
そんな青春小説です。

今読むと、かなり読みにくい文体ですけど、当時はかなり平易な文章だった。
当時、たくさんの文豪、森鴎外や島崎藤村や北村透谷らが、新しい文学、新しい日本語を必死に模索していたわけです。
そういう文筆家たちが、これを読んで驚愕した。
「そうか、こういう一般の人の内面や自我を平易な文体で書けばいいんだ」
そんな感じです。

日本を近代国家するために文学を利用した

明治維新後、新しい明治政府は日本をより豊かに、より強くすることを目標にしていました。
早急に強い国家にしなければ、西欧列強の植民地にされてしまう。
「富国強兵」をスローガンに、政府は近代国家にするためにさまざまなことをしました。

その中でかなり重要な課題があった。
それは「共通語」をつくるということ。
当時の日本では、地域ごとに方言や口語が存在しており、それぞれの地域で話される言葉が異なっていました。
このため、全国的な意思疎通が困難であったため、共通語を作る必要性があったのです。
例えば軍隊で考えてみると、薩摩の司令官が会津の兵士に命令しても通じない。
そうすると、軍は強くなれません。
共通語を作り、日本全国の人が意思疎通できるようにしなければならなかった。

そこで明治政府は文学者たちの協力を得ようと考えました。
その頃はネットもテレビもラジオも映画もありません。
マスメディアと言われるものは、新聞と雑誌だけです。
だから、そこに掲載されている小説は、ものすごく影響力があったわけです。
夕ご飯を食べた後、家族団欒の場でお父さんが新聞小説をみんなに読んで聞かせる。
そんな光景がたくさんの家庭で見られたことでしょう。
今では信じられないことですが、他に娯楽がなかったのです。

そして新聞に小説を連載する作家は有名人だった。
今で言えば、TikTokのインフルエンサーのようなものです。
政府は文学者に、文学を通じて新しい言葉や表現方法を生み出してもらい、日本全国に共通する言葉を作ろうとしたのです。
インフルエンサーマーケティングはこの頃からあったんです。(笑)
このような状況下で、文学者たちは、文学を通じて共通語の普及に貢献しました。

例えば、軍医だった森鴎外は小説の中で新しい言葉を使い、それが一般的に広まるきっかけとなりました。
また、二葉亭四迷は『浮雲』という言文一致小説を書きました。人々の生活や言葉を話し言葉で描写しそれが全国的に読まれ、共通語の一助となった。
島崎藤村も北村透谷も、小説や歌において、新しい言葉や表現方法を生み出し、共通語の普及に貢献しました。

彼らの作品はたくさんの人たちに読まれ、その中で使われる言葉や表現が、共通語の形成につながったのです。
その結果、明治時代後半には、共通語が全国的に広がり、日本語の統一が進みました。
文学者たちの努力が、共通語の形成に大きく貢献したことは間違いありません。

その先駆けだったのが、樋口一葉でした。
彼女は24歳で夭折してしまいます。死ぬ直前に、たくさんの質の高い小説を書いて「一葉の奇跡の14ヶ月」とも言われています。
彼女がもっと長生きしていたら、日本文学はまた違う進化をしていたかもしれません。
そんなことを知りながら『たけくらべ』を読んでみると、また違った感慨を覚えますよね。
より楽しめるってことです。

ちょっとした知識があるとより楽しい人生になる

当時の時代背景や作家の知識があると、文学はより楽しめます。
僕は色々と日本文学を調べているうちに、たとえば、石川啄木がTwitterの祖だと思うようになったし、ブログの祖は正岡子規なんだと確信しました。

ちょっとした知識は文学だけでなく、映画や音楽や美術も同じ。

クリストファーノーラン監督の映画『ダンケルク』は第二次世界大戦初期の歴史を知っているのと知らないで観るのでは、面白さが10倍くらい違います。
クラシック音楽の歴史をちょっと知っていると、バッハとモーツアルトの音楽の違いがわかります。
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