「資本主義の黄昏」どうして素晴らしい仕組みが機能しなくなったのか?

資本主義は素晴らしい仕組み

約250年前にイギリスの偉い学者、アダム・スミスが「資本家に任せて利益追求をする事業をやらせておけば、国も社会も豊かになる。」そう言いました。
これを『神の見えざる手』と言います。

アダム・スミスはある意味正しいことを言った。
資本主義のおかげで、世の中はかなり豊かになりました。
少なくとも資本主義を取り入れた国は、まともな生活ができるようになった。
食糧不足、燃料不足、疫病、なども極端に少なくなった。

ここにきて資本主義が曲がり角にきている。
会社は利益を際限なく追求し、経営者、銀行、投資家も短期の利益しか目に入らなくなった。
結果的に地球環境と資源を破壊し、社会に分断と貧困を生み出した。
現在70億人の世界の人が日本人と同じ生活レベルをすると、地球が3個なければできないというデータもある。

このままだと人類存亡の危機になる。
「資本主義も変わっていかなきゃ人類は滅亡する」と思う人や組織もたくさん出てきた。
まさに資本主義が黄昏になっているのです。

その資本主義の黄昏に立って、僕たちはどんな思考で、どんな行動をしたらいいのでしょう?

資本主義ってそもそもどんなの?

資本主義ってすばらしい仕組みだと思っています。
人間を豊かにしてきたから。
その資本主義の成り立ちをカンタンに説明します。

250年くらい前、さっきのアダム・スミスが生きていた時代。
イギリスで産業革命が起きました。

そんな時お金もちが「もっとお金使って大きい工場作りたいな」と思った。
なんでかって言うとその当時、イギリスで生産されていた毛織物や綿織物が、世界中でとても売れていたわけです。
でも織物は、職人が手作業で、原始的な機械を使って、こじんまりと作っていた。
それを目に付けたお金持ちが「織物を機械を使って、工場で大量生産したら、めっちゃ儲かるんじゃねー」って思って、お金使って大きな工場を建てたいと思った。

大量生産するために必要なもの

・お金
・大きな工場建てるための大きな土地
・工場で働く従業員さん

です。

そして、この3つをまとめて「資本」って言ったんです。
そして、この3つもっていて大きな工場を作れる人のことを「資本家」って言った。

これが基本的に資本主義の始まりです。
資本家は大きな工場で大量生産して、ものすごく儲けていきました。

その後資本主義の仕組みは発展していきます。
もっと大きい工場をたてたい。
もっとこんな新しいこんな製品作りたい。
資本家は儲かるものだから、そのビジネスをもっと大きくしょうとします。
でも、自分のお金だけじゃ足りない事態です。
そういう時に、銀行ができる。
銀行からお金を借りて、自分のお金だけじゃなく、借りたお金で大きくして新しい工場や新しい商品を作っていき、もっと儲かるようになる。
さらに株式市場ができます。
投資家が「ここの会社儲かってそうだなぁ」って思って、その会社の株を買って投資するということで、資本家はお金を集め、それを元にさらに事業を大きくしていく。

資本家は集めたお金で、超便利な商品を作り出したり、ものすごく多くの人を雇ってたくさん給料あげたり、どんどん人間の暮らしは豊かになってたわけです。
これが世界中でバスりまくって、日本を含めたくさんの国が資本主義を取り入れていくことになるのです。

それを見ていたアダム・スミスが「資本家やりたいようにさせとけば国全体が自然豊かになる」って言ったわけです。
資本家一人一人が自分の利益を求めて工場を作ったり、大農園を作ったり、たとえそれが自分の金儲けが目的だとしても、神の手に導かれるように国全体も自然豊かになっていくって言った。

それが冒頭に述べた「神の見えざる手」です。

ほんとによくできた仕組みで、僕らも豊かな生活をできるようになった。

アダム・スミスは間違っていたのか?

ところがここに来て「アダム・スミスは間違っていた」って認識になってきている。

神の見えざる手に任せとけば国は豊かになっていく?
「とんでもない!」ってことになってるんですね。

今資本主義のあり方が問題になっているのです。
素晴らしい仕組みだった資本主義がどうして問題になっているのか
それはね、簡単に言うと・・・

短期の儲けばかり考える会社が増えたから。

銀行がお金を貸すのは、返してもらえるから貸すわけです。
利息をつけて返してもらうと儲かるから。
だから返してくれない会社には貸さない。
近い将来儲かる、あるいは絶対儲かる会社しか貸さないわけですよ。

投資家もそうです。
自分の買った株が上がって、なるべく早く利益を確定したい。
そんな会社に投資する。

そんな風潮になると、短期的目標を立てる会社だけが、どんどん、どんどん、お金集めたり銀行からお金を借りられる。
そしてまたお金儲けに走る。
欲望が欲望を呼ぶって感じです。
そんな状況が続いていると、自分だけ儲けたらそれでいいみたいな風潮になっていった。

利益第一主義。
利益をより多く叩き出すことが正義。
どんな手を使っても売上を上げ、利益を出す。
競合他社を見境なく「戦略」という名の下に徹底的に潰しにかかる。
大量の広告を使い消費者の欲望に火をつけ、必要ないものまで買わせる。

そして、追い討ちをかけるように、マーケティングとかいうものが出てきて、流れに拍車をかけたわけです。

今は利益出ないし今は儲からないけど、50年後に世界中の食糧危機を救うような技術を持った会社にはお金が集まらない。
50年後の長いスパンで投資をしたりとか銀行がお金を貸すことは少ないのです。
銀行とか投資家が短いスパンの結果求めるようなると、会社もどんどん短期思考になっちゃう。
長い将来見るんじゃなくて、ほんとに短期の利益ばっかり考える。
そうするともかく儲かればいいってことになって、ものすごく海を汚す工場を作ったり、CO2をめっちゃ排出したり、生態系をぶち壊したりする。
そういうことが起きるようになってきた。

さらに生産性を上げるために、従業員をこき使って過剰な労働をさせて自殺に追い込んだり、安い製品作るため安い労働力を求めて、強制労働させたり、子供に1日14時間働かせたりする。
銀行とか投資家に対して嘘の儲けを発表する粉飾決算をやっちゃたり、ひどい質の商品を平気で作ったりね。

短期の目標を優先した結果、深刻な問題が発生しているのです。
結果的に地球環境と資源を破壊した。
社会に分断と格差を生じさせた。

そんなこんなことを続けているうちに。

「このまま資本主義がつき進んだらさぁ、さすがヤベんじゃねー」っていう世の中の風味になってきたわけです。

この課題を人類はどう解決していくのか?
人類は自分たちの欲望によって滅亡するのか?
この文明的な生活を続けていくことは可能なのか?

今、まさにそれが問われている。
これは大企業だけじゃなく、中小企業も個人事業主も、ビジネスに携わっている人、一人一人が考えなければならないことなんだと思うのです。

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北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」
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