世界初の個展をやった画家は反逆児
世界で初めて個展をやった画家って知っていますか?
ギュスターヴ・クールベ。
19世紀の中頃から末まで活躍した画家です。
今では当たり前になっているアーティストの個展。
昔はとんでもない非常識なことだったんです。
有名な作品はこの画像『画家のアトリエ』。
他にも『オルナンの埋葬』、国立西洋美術館に収蔵されている『波』、官能的な女性を描いた『白いストッキングを持つ女性』、19世紀美術の中で最も卑猥だとされた問題作『世界の起源』などなど、傑作をたくさん残しています。
(『世界の起源』さすがにこの作品はSNSでアップするとAIにバンされるよ。それくらいすごい「無修正」。気になる方は「クールベ 世界の起源」で検索してみてね)
19世紀を代表する画家。
レアリスムを信条にしていた人です。
当時もとても人気があって、成功した画家です。
レアリスムっていうのは、その当時主流だった、歴史や宗教をテーマにした絵画ではなく、今をリアルに描くべきだという主張です。
でも、絵画技法的には、そんなに革命的ではないし、現代人の僕たちから見ると同じじゃね、って思いますよね。
クールベっていう画家は、絵画技法は正統派だったのですが、その思想が革命的だったわけです。
1855年、パリで初めて(世界で2番目)の万国博覧会が開催されました。
当時人気だったクールベにも、作品を出すように国から依頼があります。
クールベは、この万国博覧会に大作『画家のアトリエ』と『オルナンの埋葬』を出品しようとしました。
でも、国はこれらを落選にしてしまった。
『オルナンの埋葬』は当初、作品名が『オルナンの埋葬に関する歴史画』でした。
当時のフランスの美術アカデミーにとって「歴史画」とは、古代の神々、殉教者、英雄、皇帝などを理想化された姿で描いた格調高い絵画のこと。
オルナンという、山奥の田舎町の葬式に集まった名もない人々というテーマを、まるで歴史上の大事件のように扱い、このような巨大な画面(縦約3メートル、横約6メートル)に表しているのが許せなかったんですね。
「こんな絵を『歴史画』というのはなんたることだ!」って感じ。
でもクールベは美術界の反逆児です。
「別に万博なんかに展示されなくてもいいもんね〜、僕は人気があるし、ファンがいるから自分の展覧会やっちゃうよ〜」
って感じで博覧会場のすぐ隣に建物を借りて、「ギュスターヴ・クールベ作品展。入場料1フラン」という看板を立てて、同じ時期に、同じ入場料で開催したのです。
これが世界初の「個展」だと言われています。
そしてこの個展の目録に記されたクールベの文章は、後に「レアリスム宣言」と呼ばれることになるの。
その文章でクールベは
「自分は生きた芸術をつくりたいのだ」と言っている。
「〜宣言」って言った芸術家も、クールベが最初です。
印象派登場のきっかけになった
このクールベの個展に勇気をもらったのが、当時の若い画家たちです。
後に印象派グループに集まる若くて野心的な画家たちに、決定的な影響を与えたわけです。
「クールベさん、かっけ〜!」ってところでしょう。
あらゆる権威に反抗しても自分の表現を貫く姿。
支持者(ファン)がいたら国に評価されなくても、絵を描いて裕福な生活ができるという「つながりの経済」。
その流れが印象派を誕生させ、19年後に第一回の印象派展が開催されるのです。
いつの時代も反逆児が世の中を変えてきたんだと思う。
美術の歴史を知っているだけで、作品の鑑賞が100倍くらい面白くなる。
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8月20日 午後9時からオンラインで実施します。
11時くらいまでの2時間です。
<無事に終了しました。満席だったの参加できなかった方、すみません>
藤村 正宏
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