そして画家たちは表現を始めた 印象派から気づく現代ビジネスの進むべき方向

 

レプリカンズでの講義

印象派は過激な前衛芸術だった

山形県米沢市の小野川温泉でエクスマ塾の上位コース「エクスマレプリカンズ」の合宿をしていました。

合宿の初日に、アートの話をしました。
「印象派」のことです。
どうしてビジネスの研修なのに、アートのこと、印象派のことを話したか。
そこに今後のビジネスの方向性が見えてくるからです。

19世紀の後半に登場した「印象派」。
モネ
ルノアール
ドガ
シスレー
ピサロ
セザンヌ
・・・などなどの画家が新しい美術の潮流をつくり、アートの世界を変えた。

美術に興味がない人でも、モネとルノアールは知っていますよね。
美術史に永遠に残る画家です。

印象派の名前の由来になった
モネ「印象・日の出」


印象派、最初の頃は全く相手にされない、価値を認められず、酷評されていたのです。
まさに「前衛芸術」。
でもこれは歴史に残るすごいことだった。
何がすごいかと言うと、アーティストが「表現」を始めたということ。

「え? アーティストって表現するのが当たり前なんじゃない?」

そう思った人もいますよね。
そうでもなかったんだよね。

それまでの画家は、アーティストと言うよりも「職人」の要素が強い存在だった。
王室や貴族やお金持ちの依頼を受けて絵を描くのが仕事だった。
だから自分を表現するなんてことはなかったわけです。

ところがテクノロジーの進化が世界を変えてしまいます。
19世紀の前半に写真が発明されるわけです。
そして急速に写真の技術が進歩して、19世紀後半には珍しいものではなくなります。
あのフィルムメーカー「コダック」が最初のフィルムカメラをつくったのも、19世紀の後半、1888年のこと。

当時の画家は肖像画や風景画を描くことが仕事になっていた。
だから、写真のような写実的な絵を描いていたわけです。
実物そっくりの絵。
でも、それって写真の方がリアルですよね。
おまけに時間も短縮されます。
肖像画や風景画を描いていた画家たちは仕事がなくなったのです。

そのころのフランスの美術界は芸術アカデミーが支配していました。
ここが主催する「サロン(官展)」に入選することが、画家の登竜門でもあった。
このアカデミーの偉いおじさんたちは、新しい時代の到来を恐れました。
当時のアカデミーの中枢にいた巨匠、ドミニク・アングルは政府に対して写真を禁止するように言ったそうです。
そして既得権益や肩書きや正統性を守るために、より保守的な絵画を描くようになる。

そんな中、若い画家たちが自分たちの表現を模索し始めます。

「そんな古臭い絵なんて描く意味ないじゃん、リアルに描くのはどうしたって写真に負ける、新しい表現が必要だ。俺たちは自分の描きたいことを、自分らしく表現しようぜ!」

そんな感じ。

その急先鋒に立っていたのが、マネ、モネ、ドガ、ルノアールなどの「印象派」だったのです。



既得権益を守りたい、プライドが高いアカデミーの画家たちは、自由に表現したり、面白いことをする若い画家たちが出てくるのは困るわけです。
言うことを聞かない若い画家たちの芽を摘むことにしました。
「俺の許しを得ないで勝手に表現なんてさせるか!」
そんな感じです。
そして、彼らの作品を、どんどんサロン(官展)に落選させるのです。

でも時代の変化は止められませんでした。
印象派は19世紀の終盤になると、新大陸のアメリカで大人気になります。
そして本国フランスでも、逆輸入のような形で認められるのです。

もう一つ、写真以外にも印象派の登場を後押ししたテクノロジーがあります。
チューブに入った絵の具の発明です。
それまでは顔料を砕いて、油などを混ぜ、絵の具を作っていた。
だから絵の具を屋外に持ち出すのは、結構大変だったんです。
チューブ絵の具が登場することで、屋外で絵を描くことがカンタンにできるようになった。
若い画家たちは、チューブ絵の具を駆使して、印象派の特徴である、光の動き、変化の質感を絵画で表現していった。
制作のスピードも早く、たくさんの作品が登場した。

現代、印象派は誰も否定できない革命的な芸術運動として認められています。
もしあなたがルノアールやモネの絵を一枚持っていると、それだけで東京の高級住宅地に何軒も家が買える。それだけの価値になったのです。

今こそビジネスに革新性を

テクノロジーが世の中を変えるのは今も昔も同じです。
今はまさに激変の時です。
ビジネスの考え方も革新が求められているのだと思う。

カメラの発明は今で言うとインターネットの発明。
チューブ絵の具はSNS。
印象派の画家たちは、新しいビジネスの考え方で世の中を変えていく人たち。

SNSを駆使して、新しいビジネスの考え方を広め、より良い社会に導いていく。
そういう経営者やビジネスリーダーをつくりたい。
レプリカンズのメンバーには、そんな人たちになってもらいたい。
そんな意味を込めて、印象派の話をしました。

今はコロナ禍で心が疲弊している人が多い。
なんとなく、暗くなりがちで意識も行動も狭まりがち。
見えている世界が狭まっている。

先のことなんて誰にもわからないんだから、もう楽しむしかない。
人生はあっという間だから。

今の閉塞感を突破するくらい楽しむこと。
まずは自分が楽しむ、その楽しさを周りの人に届ける、
それが世の中が明るくなっていくことに繋がります。
あなたの周りから楽しいワクワクする場をつくっていくことです。
あなたが楽しんで仕事をして、あなたが機嫌良くなり、あなたの周りに笑顔の輪が広がっていく。
それがより良い社会をつくることになるのです。

「とにかくやってみよう!ダメだったら変えればいいんだから」
「遊びのような仕事、仕事のような遊びを実践しよう!」
「どっちが儲かるかより、どっちが楽しいかで選ぼう!」

僕がずっといい続けてきていることだけど、まさに今、こういった視点が求められている。

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北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」
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