アート思考 ビジネスとアート思考:【第7話】金箔と装飾に溺れたクリムトの、徹底的なこだわり
40代の頃、僕は横浜にある会社で企画室長を務めていました。新規事業や企画のプレッシャーに追われる日々の合間、息抜きによく通っていた昔ながらの喫茶店がありました。昭和の面影を色濃く残したその店は、ネルで淹れたような濃いめの珈琲を出してくれて、タバコも吸える、僕にとってかけがえのないオアシスのような場所でした。その喫茶店には、ひとつだけ非常に風変わりな特徴がありました。壁という壁に、グスタフ・クリムトの絵のポスターが、さまざまな額に入れられて所狭しと飾られていたのです。棚にはクリムト関連の画集や書籍がずらりと並んでいる。聞けば、女性店主が大のクリムトファンなのだそうでした。