今ほどいい商品があふれている時代はない だからどれを買っても同じ
「こだわりの蕎麦」や「こだわりの自然素材のレストラン」。
かつてはめずらしくて価値があったものも、今やごく当たり前の存在になっている。
もう商品自体への「こだわり」が通用しない時代なったと思う。
あなたの商品はきっと素晴らしい商品でしょう。
お客さまに喜ばれて、お客さまの生活を豊かにするものだと思います。
でもね、あなたがどんな素晴らしい商品を売っていても、それだけではダメなんです。
大切なことなので、繰り返しますが、モノのよさ、サービスのよさだけでは、もう売れない時代なんです。
だって、あなたのライバルたちも、みんな素晴らしい商品・サービスを提供しているのですから。
今の日本ほど、クオリティの高い、質のいい商品があふれている時代はありません。
たとえば、日本のメーカーが作る4K-TVは、どれもすごいクオリティが高く、価格も安い。
日本のファストファッションの会社が作っている、服は、ものすごく質が高い。
おまけに安い。
「ウチの商品はただの商品じゃないよ。こだわった商品なんだから」
よく商品に「こだわっている」という店がありますよね。
「こだわった」商品を売れば売れる、といわれていました。
マーケティング・コンサルタントの言葉に乗せられて、「商品にこだわれば売れる」なんて勘違いしている店もあります。
でもね、残念ですけど、もう「こだわり」じゃ売れないんです。
たとえばレストランで考えてみましょう。
よく、食材にこだわっているレストランとかありますよね。
「味にこだわっている」
「新鮮な素材にこだわっている」
「低農薬野菜にこだわっている」
「食材にこだわっている」
「畑にこだわっている」
「健康にこだわってる」
「自然素材にこだわっている」
あるわ、あるわ。
ちょっと見渡すとあなたのまわりにもこういうレストランがあるのではないでしょうか。
街を歩いたら、必ずあります。「こだわっている飲食店」、それこそ「犬も歩けば」状態。た~っくさんある。
ウチの近所のチェーンの居酒屋も、友達の近所のファミレスも、あなたの近くのバーガーショップも、み~んな、こだわっている。
ここ数年、そういう流れになってきました。
「グルメ志向」「健康志向」「自然志向」……ちょっと前はそれでよかったんです。
あまりやっているところがなかったから。それで売れたんです。
でも、今はそういうところがたくさんある
消費者にとって、こだわりは特別なことじゃなくなった
「ウチは自然素材にこだわったレストランです」
そんな言葉は誰にも響かない。
だってみんなそうだから。
「材料と手打ちにこだわった蕎麦屋」
そんな言葉は誰にも響かない。
だってたくさんあるから。
長野県の戸隠に行ったら、こだわった蕎麦屋さんが40軒以上あります。
どこも美味しい蕎麦です。
でも行列ができている蕎麦屋さんとそうでもない蕎麦屋さんがある。
商品的にはそんなに差がない。
というか、とってもこだわった美味しい蕎麦屋さんのほうが行列できていないこともある。
それはどういうことかというと、商品力以外の何かが決定的にちがうってことです。
商品のこだわりっていうのは「スペック」だからなのです。
これって、「モノ」そのものを売っているってことですよね。
どんないい商品でも「スペック」では、選ばれない時代なのです。
みんながやっていることだからそれが価値にならない。
誰にも伝わらないんです。
今、大手ファミリーレストランチェーンも食材にこだわっています。契約農家から、こだわりの肉や野菜を仕入れて全国展開しています。
あるいは大手の居酒屋チェーン。
野菜にめちゃめちゃこだわっています。そして、安い。生産者の顔が見える野菜を毎日新鮮なまま、全国の店舗で使っています。
あなたの店の隣にそういうチェーンが出店してきたときに、商品へのこだわりだけでお客さまに選んでもらえるかどうか。
今、北海道に旅行に行ってみてください。
10年くらい前までは、こだわりのチーズとか、小さな牧場の手づくりチーズといったら、それだけで高くても売れていたんです。でも、現在は、こだわっているチーズが本当にたくさん並んでいます。
「トンデンファーム」「ノースプレインファーム」「十勝牧場」などなど、それこそ星の数ほどある。
「ウチのチーズは、新鮮な牧草を放し飼い状態で食べさせた、ストレスのない、とっても健康な牛の牛乳を使って、清潔な工場でこだわった製法で……」
こういうことはみんなやっているんです。
みんなやっていることが、買う理由になりますか?
ならないですよね。
「チェーン店のこだわりと、ウチのこだわりはちがうんだから大丈夫!」なんて思っていたら、あなたの店はとっても危ない。
藤村 正宏
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