ゴープロが作れない組織というのは、自ら創造力を削いでしまっている。

去年SONYを世界一の座から引きずりおろした製品

SNSをやっている人は、ゴープロっていうビデオカメラ知っていますよね。
JRが発行している雑誌にも特集されていました。
「SONYはなぜGoProを作れなかったか? 日本のモノづくりを考え直す時」という記事です。
その雑誌で知ったのですけど、昨年2013年の世界のビデオカメラの出荷台数で、それまで世界一位だったSONYを抜いたんです。
ゴープロの出荷台数は、11年が114万台、12年231万台、13年384万台。
ソニーのビデオカメラは12年370万台、13年230万台。
世界一売れているビデオカメラだっていうことです。

ボクもゴープロは去年くらいから、YouTubeで知っていました。
とってもきれいな動画やすごい動画が集まっているチャンネルです。
↓ ↓ ↓
GoProチャンネル

シンプルな目的のカメラ

シンプルな目的のカメラ

これは、どういうビデオカメラかというと、動画を撮影するためだけのカメラ。
完全防水で、堅牢で壊れにくい。

ここの会社の社長ニック・ウッドマンはサーフィンが大好きで、サーフィン仲間が苦労してデジカメを腕に括り付けたりして自分のランディングを撮影しようとしているのを見て、思いついた。
サーフィンで自分のランディングを撮影する目的のカメラ。
それがゴープロなんです。
サーフィンのボードの先端に取り付けると、自分がサーフィンしているところを撮影できる。

人がファインダーを確認して撮影するのが目的ではないので、液晶モニターはついていないし、ズーム機能もない。
向けた方向にあるものを撮影するために、レンズは170度という広角に固定されています。
サーフボードに取り付けて撮影するのに、手ブレ防止機能もありません。

これがサーフィン以外のさまざまなアクティブスポーツシーンに使われるようになりました。
バイクや自転車、ダイビング、スカイダイビング、スノボ、スキー・・・
あるいは自然系、動物の近くで撮影したり、動物に取り付けたり。
ペリカンの嘴に顔のほうに向けてつけて、飛んでいる動画とか。
ラジコンのヘリコプターにつけて、花火大会の上がっている花火の中の撮影とか。
今まで撮影できなかった撮影ができるようになった。

YouTubeで感染した

そしてさらにすごいのは、撮影している人がYouTubeでアップロードしていること。
これが拡散していく。
ゴープロが欲しくなる。
いろいろな趣味を持った人が買って、いろいろな使い方が生まれてくる。
それがYouTubeにアップされる。
また売れる。
そういう循環になっていったわけです。
まるで感染するかのように、瞬く間に拡がっていった。
当然のことですが、それと比例するように、ものすごく売れたわけです。

創造力とはすでにあるものを組み合わせる力

スペック的には日本のSONYとかが作る製品のほうが優れている。
だから、日本のメーカーだって作ろうと思ったら、カンタンに作れるわけです。
でも作れなかった。
それは「創造力」の欠如。
売れるかどうかわからないけど、面白いから作る。
面白がる文化がなくなってしまった。
創造力を欠如させてしまう組織。

たとえばSONYの開発グループでサーフィン好きがいて、ゴープロのようなビデオカメラを企画したとします。
それを企画書にして上にあげる。
そうすると、会社は

「どれくらい売れるんだ?」
「売れる見込みはあるのか?」
「何も機能がついていないビデオカメラが売れるとは思えない」
「どうしてズーム機能がないんだ」
「手振れ補正は必須でしょ」

などなど、ほとんどのエライさんが反対して、開発すらできない。
それは容易に想像がつきますよね。
大企業は、硬直化している組織になりがちです。
このままだと、日本のモノづくりの復活もありえないんじゃないの、って心配してしまいます。

創造力とは世の中に存在しないまったく新しいものを生み出す能力ではなく、すでにあるものを組み合わせる能力です。
さまざまなコトを組み合わせて考えてみること。
これが大事なわけですよ。
今ティーンを中心に流行っているソーシャルゲーム「パズドラ」だって、まったくゲームでは組み合わせできないような、ドラゴンとパズルを組み合わせた。

ゴープロの場合、社長のニック・ウッドマンがサーフィン好きだった。
サーフィンとビデオカメラを組み合わせたところからスタートしたわけです。
自分が大好きなことと、自分の仕事を組み合わせた。
だから、こんな革命的なビデオカメラができたわけです。

好きなことは大切です。
あなたの好きなことは、イノベーションにとって、すごく価値があります。
あなたの好きなことを、今の仕事のどこかに組み合わせられないか、それを考えてみましょう。

 

 

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北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」
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