照明の色が売上を左右する?
飲食店やホテルのバーなどは、落ち着いた空間になっています。
温かい色のライトを使っていて、暗めで雰囲気を出していますよね。
ボクは以前、飲食店やショップなどを企画するのが主な仕事でした。
店舗照明を考えるときには、温かい色の光が出る、照明器具を使っていました。
価格の安いものを売っているところ、たとえば、ファストフードとか安売りの衣料品店とかは蛍光灯を使う場合もありますが、多くの場合オレンジ色に近い照明を使いました。
お客さまが落ち着くからです。
照明の色が売上を左右することもあるんです。
マーケティングの有名な法則で、「滞留時間と消費金額は正比例する」というのがあります。
これは小売店舗の法則ですが、要はお客さんがお店の中で過ごす時間が長ければ長いほど、お客さんはお金を使うということです。
当のことです。
正比例するんですよ。
ですから、売上が欲しいなら、お客さんに長く過ごしてもらえばいいわけです。
単純な話ですよね。
私も小売店にアドバイスするときには、滞留時間を延ばす工夫をします。
滞留時間を延ばすための工夫は、さまざまな方法があって、今までずいぶんたくさんの試みをしてきました。
そのひとつに、照明の光の色を変えるというのがあります。
私が手がけた、ある観光ホテルの売店では、スポット照明を増やすことによって、滞留時間が延びました。
ここの売店、ベース照明は蛍光灯なのですが、スポットの照明が足りなくて、なんとなく均一で面白くない環境になっていたのです。
そこでもっとお客さんに買ってもらおうということで、スポット照明を増設したのです。
これは大成功でした。
スポット照明を付け足すことによって、商品はよく見えるようなり、売店の環境もメリハリの利いたものになりました。
いままでよりも魅力的な売店になったわけです。
蛍光灯というのは読んで字のごとく「蛍光物質」です。
モノを明るく見せることはできますが、平面的になってしまいます。
滞留時間を延ばしたいのなら、蛍光灯の白い色より、電球のようなオレンジ色の光がいいわけです。
レストランなどの飲食店も同じです。
くつろぎの空間には蛍光灯を使用しませんよね。
想像してみてください。
あなたが知っている「くつろげる飲食店」の照明が、仮にすべて蛍光灯だとどうですか?
想像できました?
やっぱり変でしょう?
そうなのです、蛍光灯の白い光は集客施設には向かない色なのです。
それはどうしてかというと、原始時代の記憶とつながっているからです。
原始時代、人間は洞窟の中で暮らし、男は狩りにでて、女は集団で子供を守っていました。
その時のDNAを未だに引きずっているということ。
原始時代の生活の99%が恐怖との戦いでした。
いつ命を落とすかわからない危険な世界だった。
天変地異などの自然の恐怖。
野獣や敵対する民族の恐怖。
暗闇などの恐怖。
だから、落ち着く空間というのは、安全が確保された空間ということ。
一日が終わり夜に、同じ仲間同士で、洞窟の火を見ている。
それは安全な空間だったわけです。
だから、現代人にもその時の記憶が残っていて、火を見ると心が安らぐというわけです。
蛍光灯は火の色ではありません。
オレンジ色の電球は、火を連想させるから、落ち着く空間になる。
そういうことです。
原始時代からの本能が残っていて、それが人間の感覚や行動に少なからず影響する。
そういうことってあると思う。
この照明の例だけじゃなく、人間が端っこが好きだとか、串刺しの料理が美味しく感じるとか、まだまだたくさんあります。
そういうことを知っているのと、知らないのとでは、店舗の設計にちがいが出てきますよね。
店だけじゃなく、施設全般にいえることです。
面白いでしょ。
藤村 正宏
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